saitou_ken_monogatari
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斎藤は、提案した。「みんなのメールボックスに入れるビラなんだけど、クーポン券をつけたらどうだろう?」アメリカでは、週末の新聞の折りこみチラシにクーポン券がついている。たとえば、スーパーマーケットが牛乳一本のクーポン券をつけたとする。そのクーポン券があれば、牛乳一本につき、あと一本は無料になるのだ。アメリカに住んでいれば、クーポン券はめずらしいことではない。が、それを選挙に利用するという発想が新鮮だったらしい。そのアメリカ人は、眼を輝かせた。「それは、面白い」さらに、斎藤は、アジアからの留学生を中心に票固めをおこなった。投票前、候補者による演説とディベートがおこなわれた。役員のなかでも財政委員を希望した斎藤は、つたない英語ながら、なぜ財政委員をやりたいのか、もっと他の大学と交流すべきではないか、といった主張を展開した。開票の結果、斎藤は、なんと2位で当選をはたした。しかも、トップ当選した学生との差は、わずか1票であった。斎藤は、勝因を分析した。〈おそらく、面白そうな奴だから、やらせてみようという感覚だろう〉財政委員となった斎藤は、アメリカは多様な人の集まりだということをあらためて実感させられた。たとえば、日本の大学のクラブは、あらかじめ年間の予算額が決められている。が、アメリカの大学は、イベントごとに自治会に活動費を申請し、財政委員会が、一件ごとに支出すべきかどうかを審議する仕組みになっている。したがって、財政委員会には、ブラック・コーカス、ヒスパニッシュ・コーカス、ゲイ&レズビ12
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