saitou_ken_monogatari
24/30

った。常日頃から日本の将来を懸念していた彼は、余命いくばくもないことを悟り、自分が日本のために何ができるかを考えた。そして、取材で知り合った国会議員と官僚のなかで、もっとも評価できる人物を引き会わせようと思いついた。その2人こそ、上田と通産官僚の斎藤であった。3人は、料理屋で酒を酌み交わした。それからまもなく、そのジャーナリストは死去し、上田は、埼玉県知事に転身。「3Sチャレンジ」、つまり「スピード」「スマイル」「スピリット」の3S、要するに県民に向けた行政をおこなうことを掲げて戦っていた上田知事は、そのサポート役として斎藤に白羽の矢を立てたのである。斎藤は、就任時に言ってのけたものだ。「カツオの中にオコゼを一匹入れると、緊張感が高まり、長生きすると聞いた。わたしも、県庁でオコゼのような存在になりたい」斎藤は、就任1年後、「埼玉日報」で埼玉県庁はいかにあるべきかについて語った。「埼玉県は、他県と比べて大きな潜在力を持っております。平均年齢が全国で2番目に若い県であり、人口も2015年までは減少しません。県内の製造業もしっかりしており、理研をはじめとして世界に冠たる研究所群もあります。福祉を担う志の高いNPOも多く出てきております。これからの課題は、そういう各種の宝を有機的に結びつけて相乗効果を発揮させることだと思います。そのためには、県庁の職員が汗をかいて飛び回り、世話焼きになることが大事です。これまでの県行政というのは、どちらかといえば、公平・平等な制度作りに力点が置かれておりましたが、これからは、行政のあらゆる分野の現場で世話焼きをするということに、力点がシフトしていかねばならないと思っております。つまり、県庁を一番のサービス産業にするという上田知事の主張を徹底す22

元のページ 

page 24

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です