農林水産大臣としての日々
【農林水産省職員への齋藤大臣訓示(要約)】
常々申し上げていることでありますが、日本の農林水産業が日本に果たす役割というのは、極めて大きい。地域を守るためにはどうしても農林水産業が元気でなくてはなりません。同時に、人口が減少していく中で、産業としての農林水産業は、新しい展開を図っていかないとジリ貧になるという厳しい現実があります。
そういう時代環境の中で、皆さんは農林水産行政を担う巡り合わせになっているわけです。農林水産行政に一生かけて取り組もうとこの省の門を叩いた方がほとんどだと、私は信じておりますが、そういう皆さんにとって、こういう時代にたまたまではあるが遭遇したということは、役人冥利に尽きるのではないか。多くの試練があろうかと思いますが、大きな使命感をもって新しい農林水産行政を展開していっていただきたいと、心から期待しております。
三つほど皆さんにお話ししたいと思います。一つは、自分の所属する課の行政はいったいどうあるべきなのか、このままでいいのか、変えるんであればどこをどう変えるべきなのか、そしてどの程度の政策を展開をしなければ現実を変えることができないのか、そういう本質的なことを考えて、自分の意見を持っていただきたい。こうすべきだと。今のままでいいなら今のままでいい、堂々と言えばいいし、だめだと思ったらどうすべきかを、真剣に一人一人自分の意見を持って考えていただきたい。絶対やってはいけないことはアリバイづくり行政です。「やってます、やってます」とやってるつもりになっているんだけれども、それは説明をしているだけであって実態は動かない。アリバイ作りのための資料作り、アリバイ作りのための予算取り、そういうつまらないことに力を注ぐのではなくて、どうしたらいいかということを本気で考えて、そのために山が大きくても谷が深くても乗り越えていこうと、そういう心持ちを持っていただきたい。
二つ目は、広い視野を持って欲しいということです。これからの農林水産業は、広い視野がなければ答えは見つからない。私はこれまで4年間皆さん方と接しながら、こう確信しています。多くの外の人達とつき合い、一見関係のないような書物を読みながら日本の農林水産業のあるべき姿を自分で考えるということを是非実践していただきたい。
三つ目は、そういうふうに考えた上で、思い切ってチャレンジをしていただいた時、それがうまくいかなくても、向こう傷は問わない。そういう農林水産省であって欲しい、そう願っています。
最後に細かい話になりますが、私もいろんな省庁の方とおつき合いをして参りましたけれども、一つ気になることがあります。それは副大臣室で議論をしている時に、私が質問をします。そうすると、それに直接答えずに全然関係ないことをとうとうとしゃべる方が多くいます。非常に良くない。分からなければ、「分からない。その点については、調べてお答えします。」それで結構なんです。関係の無いことを延々としゃべるというのは、結局、自分で自分をごまかしているんです。自分をごまかす人は、どうすべきかということを真剣に考えなくなります。ですから、小さなやりとりであっても、この質問に対してはどう真剣に答えるべきなのかということから一歩を始めていただきたいと思います。
いろいろ申し上げましたけれども、私は、皆さんに使っていただきたいと思っています。「大臣、これやらなければだめですよ」、「こうしないと日本の水産業はだめになります、難しいけどやりましょう」、そういう形で是非使っていただくことを最後にお願いして、挨拶とします。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
(平成29年8月4日)