集団的自衛権についてのさいとう健の考え
一昨日、集団的自衛権の行使を可能とする法案等が衆議院で可決されました。多くの論点がある法案ではありますが、今回のメルマガでは、文字数の関係もあり、集団的自衛権に絞って、さいとう健の考えを述べたいと思います。少々長いですが、ご容赦いただければ幸いです。
本件につきましては非常に感情的な議論が多いので、意気込み過ぎた言葉や、内容と異なるレッテル貼りを排除しながら、静かに述べてみたいと思います。
【議論の前にしなければならない一つの決断】
まず、この議論を行うに際しまして、好むと好まざるとにかかわらず、我々は一つの決断をしなければならないということです。つまり、日本の安全保障をどう確保するかについて、次の三つの中からどうしても一つ選ばねばならないということです。
一つ目は、日本の安全保障はアメリカとの協力の下で確保していくという考え方。二つ目は、日本の安全保障は自国だけで確保していく、三つ目は、非武装でいく。
さいとう健は、自国民の生命、財産、領土を他国に守ってもらうという事態は、誇りある独立国としてはいずれ解消していかねばならないと強く思っていますが、2015年夏の時点において、それは現実的ではありません。今は、賢くアメリカとやっていくしかないと思いますが、みなさんは、どう思われますか?
【議論の前にどうしても必要な認識】
それでは、アメリカとうまくやっていくとして、そのとき大事なのは、今の両国の関係は、日本にとって信じられないくらいに虫のいい話になっている、この点をきちんと認識しなければならないということです。
つまり、日本が他国から攻撃を受けた場合にはアメリカの若者が体を張って守ってくれるが、アメリカが他国の攻撃にさらされた場合には、仮にそのことによって日本の存立基盤が脅かされる場合であっても日本は知らん顔。これが今の両国の関係なんです。
どう思われますか?こういう関係が長続きすると思いますか?かつてのアメリカならともかく、今のアメリカにいつまでもこんな虫のいい話を期待し続けることができるのでしょうか?
せめて、アメリカが他国の攻撃を受けた場合であって、それが日本の存立基盤を脅かすようなケース、せめてそのくらいのケースにおいては、日本もアメリカに軍事的協力ができるようにしようじゃないか、それが今回、国会で審議している集団的自衛権の限定的行使容認なんです。ですから、アメリカに対する支援行動とはいえ、日本の存立基盤が脅かされた場合のみにおける行動でありますから、わが国の自衛のための措置ということなんです。
【今回の法案は違憲か?】
今回の法案が違憲だという意見が多くの学者等々から出されています。この点についての私の考えですが、今述べましたように、アメリカに対する支援行動とはいえ、日本の存立基盤が脅かされた場合にのみ行動するというものですから、わが国の自衛のための措置に限定されており、少なくとも、自衛のための措置を認めた最高裁の過去の判決の論理から逸脱したものだとは言えないと考えます。
一般的な集団的自衛権の行使はもちろん違憲ではありますが、自衛のための措置に限定するならば、過去の判決の範囲内にあると言えます。逆に言えば、憲法の範囲内で許される措置として今回提案されているということです。
【アメリカの戦争に巻き込まれる?】
ここで、もしアメリカが攻撃を受けアメリカの若者が苦境に陥り、しかも同時に日本の存立基盤が脅かされるような事態が発生したとして、そのとき、日本が知らん顔をしたとします。その場合アメリカには、日本のためにも戦っているんだという意識が当然あるでしょう。そんなとき、日本が知らん顔を続けたら、次に日本に何かあった時に、果たしてアメリカは自国の若者の命を犠牲にしてまで日本を守ろうとするでしょうか?みなさんは、どう思われますか?私は、極めて危ういと思います。
今回の集団的自衛権の限定的行使を認めると、アメリカの戦争に巻き込まれる、だから戦争法案だという主張があります。確かに、リスクはあるでしょう。ただ、同時に、この限定的な行使すらすべきではないと主張される方は、そんなことでは、いざというときにアメリカが日本を本気で守ってくれなくなるというリスクが高まるという点も、同時に主張しなくてはならないと思います。アメリカの若者にも、お父さん、お母さんはいるんですから、なんでそんな日本を守らねばならないのかと、アメリカの世論は必ずなる。
ですから、限定的ですら集団的自衛権の行使をするべきではないと主張される方は、同時にアメリカが日本を守ってくれなくなるかもしれないという覚悟も示さねばならないんだと思います。さらに言えば、覚悟だけでなく、日本の自衛力の増強も主張しなくてはならないのだと思います。
要は、集団的自衛権の限定的行使によるアメリカの戦争に巻き込まれるリスクと、そんな程度のことすら日本がしなかった場合においてのアメリカの反応のリスク、のどっちのリスクを取るのかという選択の問題なんです。
皆さんにはいろいろなお考えがあろうかと思いますが、さいとう健は、後者のリスクの方がわが国に与える影響は比較にならないほど大きいと判断しており、したがって、今回の法案は、好ましいものではないにしろ必要な選択だと判断しております。
しかも、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しているわけですから、日米協力による抑止力はなおさら必要です。
【終わりに】
今後、参議院での法案審議が本格化していきますが、ぜひ政府においては、丁寧なわかりやすい説明を国民のみなさんに徹底して行っていただき、一人でも多くの方の納得を得た上で法案成立に持ち込んでいただくよう強く要請したいと思います。
同時に、この法案に基づき実際に自衛隊が武力を行使する場合には、国会の事前承認が必要とされておりますが、われわれ国会議員も、悔いのない賢明な判断が行えるよう一層の研鑽をつんでいかねばなりません。
そして、間違いのない事前承認の判断が国会において行われるためには、そもそも海外の情勢分析に間違いがあってはなりませんから、情報収集体制の強化にも努めていかねばなりません。
必要な法案とはいえ、国会議員にとっても厳しい責任が加わることになるわけで、さいとう健は今更ながらバッジの重さをずしりと感じております。