税と社会保障改革の忘れもの
「税と社会保障改革の一体改革」が、いよいよ3月には法案化されて国会に提出される運びとなりました。
今回の消費税増税の議論については、この月刊でもたびたび取り上げてきましたが、今回は、忘れられている大事な論点について、さいとう健の意見を申し上げたいと思います。
1月30日の読売新聞に、こういう記事がありました。
フランスが今年10月から、付加価値税(日本の消費税に相当)の税率を19.6%から21.2%に1.6%引き上げるという記事でありました。興味深いのは、その引き上げによって得られる増収分1兆3千億円を、企業の社会保障負担軽減に充てるという点です。
その理由は、企業が高負担に耐えかねて海外流出し、空洞化が進んでいるので、それを防止するためだというのです。
実は、本来、我が国の「税と社会保障改革」も、法人税や相続税・所得税など税制全般の改革を行うということになっておりましたが、いつの間にか消費税の増税の議論だけとなり、それ以外の改革はほとんどが先送りとなっております。世界最高水準の法人税の負担軽減も行われておりません。
最近新聞を読んでいますと、企業が海外に出ていく記事であふれています。さいとう健は、今、戦後最大の空洞化の危機だと心配してます。このままの状態が続くと、雇用や中小企業の取引に大打撃です。少しでもこの動きにブレーキをかけるような政策が今ほど必要なときはありません。
なのに、現政権の議論は消費税だけで、この視点は全くありません。
今回の月刊では、消費税改革と同時に、税制の抜本改革を行い、とりわけ、法人税負担の抜本的軽減策を講じないと、手遅れになると強く主張したいと思います。一度海外に出て行ってしまった企業は、なかなか国内には戻ってきません。
サルコジ大統領によれば、2000年代半ばにドイツが行った税制改革でも、消費税増税と企業の労働コスト削減を同時に行い、輸出増加・経済活性化につながったそうです。
最近知人の大企業の社長がさいとう健に語った言葉が、耳から離れません。
「自分は日本企業だから日本で事業をして雇用も維持したい。でもこの環境では無理だ。政府に言っても我々のことは考えてくれないし、騒ぎにもしたくないから、できるだけ静かに海外に出ていくしかない。」
我が国の「税と社会保障改革」にも、ぜひこの論点を付け加えるべく、国会で論争をしていきたいと思っております。手遅れにならないうちに。
それにはまず、わが党も民主党の協議要請に応じて建設的な議論を積み上げていくことが大事だと思います。
平成24年2月17日
衆議院議員 さいとう健