アベノミクスと消費税
さる6月1日、安倍総理は消費税10%引き上げの2年半延期を表明しました。一方、野党は、アベノミクスは失敗したとの論陣を張っています。今号では、本件についてのさいとう健の考えをお伝えしたいと思います。
<復習・アベノミクス発動の背景>
まず、アベノミクスを行うに至った背景を思い出していただきたいと思います。
平成24年12月、安倍政権が誕生する前、先進国の中では、日本だけが15年にわたるデフレに苦しみ、日本だけが低成長にあえいでおりました。
デフレ経済の下では、物価が下がり続けますので、企業がせっかく設備投資をしても収入は目減りしていくことになります。ですから、借金してまで投資をしようという意欲は失せます。
また、年々物価が下がるのでしたら、あとで買った方が得だということになり、個人消費も盛り上がりません。
結果、先進国の中で、日本だけが経済活力を失っていったのです。
<アベノミクスの狙い>
アベノミクスの狙いは、この縮こまったデフレマインドを前向きに転換して好循環を作り上げていこうというものでありました。
つまり、年率2%の物価上昇を実現し、投資や消費を前向きなものにしていこうというものであり、このようなインフレ目標を掲げて経済政策を行うということは、既に多くの先進国でも行われているものでありました。
まずは、日銀と協力して異次元の金融緩和に踏み切り、2%の物価安定目標も設定いたしました。同時に、最初から民間の設備投資が盛り上がるということは考えにくかったので、先行的に財政出動による景気対策を講じました。さらには、中長期的な成長戦略も組み上げていくという段取りで、アベノミクスが実行に移されていくことになったのです。いわゆる三本の矢です。
<アベノミクスの結果>
そして、3年あまりが経ちました。日本経済はどうなったでしょうか。景気回復の実感がないという方も多くおられるのもよく承知しておりますが、基本的データは押さえておく必要があると思いますので、詳しくはホームページの月刊さいとう健欄の最新号に掲載させていただきました。皆さんは、これをどう判断されますでしょうか。
<アベノミクスの評価と消費税>
さいとう健には、正直、現在のわが国経済は安定成長軌道に乗り切れていないように見えます。
ただ、ここで大事なことは、これでアベノミクスが失敗したとみては絶対にいけないということです。
我が国の経済状況が当時想定したように展開していないのは、大きく二つの要因によるものです。一つは、中国経済の不安定化によるものであり、この不安定化がブラジルなどの新興国の経済の悪化を招いています。安倍総理が伊勢志摩サミットで世界経済がリスクにさらされていると表明した際、言い過ぎではないかとの批判がありましたが、さいとう健は、中国に端を発する現在の世界経済の状況をあまくみては絶対にいけないと思っています。
もう一つは、消費税の8%への引き上げが思ったよりも景気に悪影響を与えたことです。総理もかつて予定通りの10%への引き上げを言明したわけですから、見通しの甘さについて猛省をしなくてはいけないと思いますが、だからこそ今回の消費税の引き上げ延期は、さいとう健はやむを得ないものであったと思います。
さいとう健の見立てでは、予定通りの消費税の引き上げを行った場合には、おそらく、日本経済に相当の悪影響を与えることになり、ついには、今後長期間デフレ脱却のチャンスが失われる、こういうことになったと確信してます。
大事なことは、現下の情勢は、アベノミクスが失敗したのではなく、その後の新しい情勢によって引き起こされてる問題なんだということを冷静に認識することです。ここを読み間違えて、アベノミクスは失敗したから金融緩和はやめようなどということになったら、円高は急進展し、株価は暴落するなど大きな混乱を招くことになるでしょう。アベノミクス失敗を声高に叫ぶのは自由でありますが、では代わりにどういう経済運営をするのかを具体的に示していただかねばなりません。特に、金融緩和をどうするかについて。
20年にわたる経済停滞です。そう簡単に治るものではないでしょう。ですが、この道以外に、日本経済を再び安定成長路線に乗せていく道は私には思いつかない。そして、経済成長の果実を、医療、介護、子育てなどの社会保障にやさしく使っていく。
やはり、この道しかない。今回の消費税引き上げ延期の判断も、この道を進んでいく上でのやむを得ざる応用動作であった、さいとう健はこう考えております。
平成28年6月8日
農林水産副大臣
衆議院議員 齋藤健